写真は必ず写された作者の人生が映し出されます。この写真にはこの方の普段が写っています。よそ行きでない、この方が日常大切になされているものが写しこまれています。普段こそ、その人だけでなく誰にも分ち合える、変わることのない真実が潜んでいるのです。誰にでも解かっていることは誰にでも死がおとずれることだけです。写真には、とかく見た眼やドラマ性を求めがちですが、その中身こそが大切です。大切な物はごく身近にあるのです。そこにこそ、いつの時代でも変わらない真実があるのです。
この方はご自分の心にピントを当てながら、日常の共感できるものに、しっかりとカメラのピントを合わせています。二人の背にした一本の樹、何気なく添えた手と手、ゆったりとした空間のとりよう、実に細部まで優しい目配りができています。写真は被写体との関係です。身構えたり、もの欲しそうだったりするのではなく、自分自身をさらけ出せれば、相手の方も心を開いてくれます。その為にはひとつのテーマを持ち続けることです。この方はおそらく人間という大きな、そして自分自身に繋がるテーマを持たれ日々の暮らしの中で、テーマを深めながら、写真と仲良く暮らしておられるのではと勝手に想像しています。これほど贅沢な写真人生はありません。この写真は改めて写真とはなんなのか?を真っ直ぐに語りかけてきます。是非、みなさんも一緒に考えてみてください。
【評:平井 純】
桜並木の小路に桜の花びらが散って鮮やかなピンクに染まっている。そこに少女が大きなピンクの傘を低くさし、ピンクの雨靴で歩いて遠ざかるうしろ姿の写真。 しかも傘の一部は透明になっており、背中のピンクのリュックが見える。これは演出なのか、偶然なのか、それとも、少女の母親が季節に合わせて、コーディネートしたものだろうか? 思いは巡る。しかし、もはやこの作品には種明かしはいらないだろう。この出会いに瞬時に反応して瞬間を切り取った作者の感性・機敏性が素晴らしい。おそらく、作者の日常生活は写真と共にあり、バッグには常に小型の機能性の高いカメラが出番を待っているのでしょう。ピンクに彩られた「ピンクの共演」は見る者に写真の楽しさを可愛い色でも表現してくれました。
【評:奥村よしひろ】
ニューフォト賞は他の写真とは違う視点で審査しています。フォトカジェー賞、準フォトカジェー賞、ニューフォト賞と1位、2位、3位ということではなく、これまでに無い新しい表現、アーティスティックな目線で撮られた写真こそが「ニューフォト」ということです。今回は特にその点を強く意識して審査しました。この「行く春」はすごく印象的な写真です。手前の桜、水面に落ちた花びら、それをかき分けるように泳ぐ鳥、水面の模様、それらが適度にボカされています。抽象的に表現することで見る者の感性に訴えかけ、心に残ります。普段からそういう目線で物事を見ていないと、こういう場に遭遇してもなかなか撮れない一枚です。カチッと撮られた風景写真とは一線を画す写真ですが、この幅広く表現できることもまた写真の魅力の1つだと思います。
【評:伊藤圭】
新しい風景写真として見ました。 生き物だけを捉えた生態写真は多いのですが、そこからこの写真は抜け出しています。少女の姿、様子に溺れなく、命ある蝶と少女を徹底して見つめておられることに 感心しました。昆虫館で出逢えた日本で一番大きな蝶、オオゴマダラと少女を地球の生命体として理屈抜きに写真でしか出来ない表現力で見せてくれています。 少女はオオゴマダラの大きな黄金色の蛹がいる、色鮮やかな楽園で共に遊ぶ蝶のようです。
【評:平井 純】
ゆかた姿、竹林、紫陽花と、日本の伝統美が散りばめられている。浮世絵の見返り美人を連想しました。世の移り変わりの中で、日常ではゆかた姿を見ることはほとんど無くなったが、花火大会や境内でのお祭りなどで見かけ、つい目を細めてしまう。映っている場所は分からないが最近は季節のイベントなどで「レンタル浴衣」が若い女性に人気だと聞く。この作品もその一場面だろうか。雨上がりに竹林と紫陽花、花柄ゆかたに身を包み、しっとり歩むうしろ姿に気品を感じる。そして結い上げられたうなじの美しさ。男勝手だが懐かしい日本女性の清楚な色気を感じさせる作品です。僕は好きだなぁ~。
【評:奥村よしひろ】
抽象的表現は、イマジネーションが膨らむ作品です。 窓ガラスの模様が結露を連想させる寒い冬の夜明け、しかし、部屋の内は光彩に包まれ、これから出発する未知への旅に心弾ませ談笑している二人の会話が、聞こえてくるような、情景を連想させる楽しい作品です。 忘れられない旅の一コマがふっと甦るのでした。
【評:入江三帆子】
森林と沼がグリーン一色に染まり不思議な空間を作り出している。森林が水面に反射する構図はシンメトリーになりがちだがこの作品は沼の画面を多く取り込み、さらに、水面をなでる微風がぼやけた森林映像を作り出し、単調になりがちなシンメトリーを回避している。じーっと眺めていると写真の中に入って行きそうになる、不思議なグリーンの静寂な空間を作り出しています。「発見」と「切取りの妙」が評価される作品になっています。 自分だけしか知らない秘密のスポットや空間を探し出すのも写真愛好家の大事な楽しみのひとつですね。
【評:奥村よしひろ】
とにかくこの笑顔がいい!若々しいエネルギーがあふれています! 普段は地味にお囃子の練習をしているのだろうと思われますが、その苦労が本番 に爆発したといったところでしょうか。彼女たちが心から祭りを楽しんでいる様子が伝わってきて、見ているこっちまで楽しく元気になれる、そんな写真です。 きっと掛け合いの中での一コマかと思いますが、最高の笑顔の瞬間を見逃さずにシャッターを切った、その観察力は素晴らしいと思います。 お祭りに参加している方も見ている方も、みんなの青梅への愛が感じられます!
【評:伊藤圭】