忘れられた空間

室内を舞台とし光を主役とした創造性の豊かな作品です。閉鎖的になり勝ちな作品が多い時代、作者は生き生きと自分の世界に取り組んでいます。室内の者達はこの時代や人々を象徴し、降りそそぐ光のシャワーは福音や歓喜に溢れています。作者の時代を見つめる眼、想像力、その新鮮さは大変フォトカジェーにふさわしいと決定しました。

バーバ見て!

よく見かける子供らしい写真とは違い、ひとりの生きている少女があますとことなくとられています。それは車の室内という空間と横位置での構成に併せて少女が心を開く肉親によってこそ出来た作品です。少女のはにかみや甘えと共に全身をさらけ出した彼女のフォルムと線は彼女の内面までもとらえられて、少女の成長の物語へとつながっています。

紅葉銀河

応募された写真の中で秀でたネイチャー写真が少なかったのですが、この作品は見るものを引きつける力がありました。日本人の持つ美意識が暗部とのバランスでシンプルに表現されています。是非、美しいものの何に引かれたのかをつきつめられ、写真と取り組んで下さい。

青の世界へ

全く無機質な都市の夜景が青く人工的にとらえられています。青空の透明感のある青と違った、身にまとわりつくような青が魅力的です。夜空や大地にくるまれた景観は新ネイチャーフォトを覚えます。

非日常の出来事

このコンテストもそうですが、人や時代と正面から向かい合う写真が少なくなった折、この写真はストレートに見る者に迫ってくる言葉を全く必要としない作品です。この時代が一瞬にとらえられた記録性と表現力に富んだ作品です。

サークル窓

本来窓は外に向かって開かれ、人は窓に立ち外と呼吸します。その窓達は暴力的に積み上げられ、窓の形として残り続けています。先には溝が見え、草原も見える刺激的な光景です。この写真は深読みするよりも、見る事に徹することの方が生き生きとしているようです。いかがでしょうか。

再び逢う約束を交わした

道端の誰もが気にも止めない物に作者は物の持つ「いのち」を感じています。彼らに話しかける“暑いね”“大変だね”“またね!”と。夜の外灯の彼達も魅力的です。この作法を大切にして下さい。

雀のお宿

写真という平面的な表現を生かされ舞台に仕立てました。そのため舞台に並んだ一羽一羽のしぐさが極立ち、会話までもが聞こえてくるようです。これを支えているのは作者の小さな生きもの達への愛おしさに尽きます。

キャラ釣り

よくある祭りの写真とは全く違います。絞り込まれたキャラ釣りの一枚が祭りの情景や今の子どもを伝えています。くるくると水面とキャラ達が廻り、ぶれた水の流れは過ぎてきた昭和の祭りを思いおこします。

夜の船溜まり

江戸時代からの佃つくだの水面と高層マンションの灯が時を越えて“入れ子”のように混ざり合っています。見る者は過去と現在を行き往しファンタジーの世界へと誘われます。水底にはかっぱでも潜んでいるようで新しい民話の世界になっています。

雨に唄えば

思わず口ずさみたくなる懐かしさを持った写真です。「懐かしさ」は写真表現の大切な要素ですが、単に懐かしいものを撮ったのではなく見慣れた日常の中から、そっとすくい取って見せてくれた作者の視線と感性は誰にでも出来るものではありません。

雲烟縹緲

沸き立つ雲と山の塊がモノトーンで画面を占めています。そこには自然の圧倒的なエネルギーの力が表現され、自然に対する畏敬の念がうかがえます。自然を単なる美しさととらえるのではなく、自然とどう向き合うのかという作者の視点の確かさが良いです。

山の神

天に向かう木立をぬって降りそそぐ光はこの山の神域を象徴しています。モノクロ化することで光の神々しさが強調されましたが、デジタルでしようか光の輝きが失われているのが勿体ないです。写真は又、光画です。是非光を手に入れて下さい。

赤と黒の女


至福の瞬間(とき)


路上市場(イタリア、カプリ島)


あの雲に乗りたい


奥多摩の秋


瀬音の湯にて


諏訪大社の御柱 2


戦災遺跡


とまどい


しゃぼん玉


女の子


蜘蛛の糸


真夏の分岐点


校庭の桜


標識(小笠原)


懐古、今時


へそまがり

夏はやっぱりこれ

第1回「青梅フォトカジェー」コンテスト総評
始めての試みとしては、大変内容のある 172 点の作品が寄せられました。選考には山口芳男氏、藤田ひろみ氏、奥村よしひろ氏、平井純の4名があたり、午前と午後にわたり皆様の作品を見せて頂きました。
応募なされた方が、何を、どう見たのか、それをどう表現されたのかを大切にして作品を選びました。
特に印象に残ったことは、身近な物や事に目を向けられていて好感が持てました。
一方、今の時代や人にレンズを向けてる方が少ない事は残念でした。又、印象風景的な写真も多く、それらの人達が今後どう変っていくのか、どう自分の道を切り開いて行くのか興味のあるところです。

皆様の写真を選ぶということは、写真というボールを介してのキャッチボールです。その為、少し長い文となりましたが、これからもこのキャッチボールを続けていければと願っています。

2013 年 8 月 20 日
審査委員長 平井 純